neroliabs’s blog

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Tisagenlecleucel in Adult Relapsed or Refractory Diffuse Large B-Cell Lymphoma

December 1, 2018 
DOI: 10.1056/NEJMoa1804980

 
バックグラウンド
一次および二次療法に不応性であるか、または幹細胞移植後に再発したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を有する患者は予後不良である。 キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であるtisagenleclecelは、CD19陽性B細胞を標的とし、単施設のphase2a studyにおいて、B細胞リンパ腫に対して有効性を示した。
 
方法
われわれは、自家移植移植に不適格であるか、移植後に疾患進行があった再発または難治性のびまん性大B細胞リンパ腫の成人患者に対して、中央で製造されたtisagenleclecelに関する国際的なphase2試験を行った。 プライマリーエンドポイントは独立した審査委員会で判定された best overall responce(つまり、CRまたはPRを示した患者割合)とした。
 
結果
合計93名の患者が投与を受け、有効性の評価に含められた。投与からデータ中断までの中央値は14ヶ月(範囲、0.1〜26ヶ月)であった。best overall responceは52%(95%信頼区間、41〜62%)であった。患者の40%がCRとなり、12%はPRであった。responce rateは、予後に関するサブグループを超えて一貫していた。初回効果後12カ月で、無再発生存率は65%(CR患者のうち79%)と推定された。もっとも頻度の高いgrade3-4の有害事象には、サイトカイン放出症候群(22%)、神経学的事象(12%)、28日以上持続する血球減少(32%)、感染症(20%)、発熱性好中球減少症(14%)が含まれた。 3人の患者が、投与後30日以内に疾患の進行により死亡した。 tisagenleclecel、サイトカイン放出症候群、または脳浮腫に起因する死亡はなかった。 腫瘍細胞におけるCD19発現や免疫チェックポイント関連タンパク質発現の差による効果の差は見られなかった。
 
結論
成人における再発性または難治性のびまん性大型B細胞リンパ腫におけるCAR T細胞療法の国際的研究では、tisagenlecleucelを用いて高い確率で持続する効果が得られた。
 
・・・Tisagenlecleucel・・・チサゲンレクロイセル・・・CAR T細胞療法。
CAR-Tは勉強するのを避けてきた。いよいよちゃんと読まなきゃだめなようだ。血液フロンティアの2017年7月号がCAR-Tの特集だった。出してきて読むか・・・

A novel complete blood count‐based score to screen for myelodysplastic syndrome in cytopenic patients

Br J Haematol. 2018 Nov 8. doi: 10.1111/bjh.15626. [Epub ahead of print]

 骨髄異形成症候群(MDS)の診断は、しばしば困難であり、時間と資源を消費する。しかし、血算(CBC)の徹底的な分析は、血球減少の他の原因の中からMDSをスクリーニングするのに役立つ可能性がある。この仮説を検証するために、新たに診断された109人のMDS患者およびMDSがないことが確認された50歳以上の399人の血球減少患者が前向き研究に登録された。マルチパラメータ分析では、平均粒子容積(MCV)、絶対好中球数(ANC)および好中球の内部構造の複雑さと分布の幅の中央値(Ne-WX)が2つのコホート間で有意に異なり、MDS-CBCスコアとして定義された。このスコアは、86%の感度および88%の特異性をもちMDSの予測を可能にした。MDS-CBCスコアは、89%の血小板減少対照においてMDSを除外した。さらに、MDS診断におけるスコア値の高さは、EFS(P = 0.02)および全生存期間(P = 0・01)の減少と有意に相関した。このスコアの検出力は、独立した検証コホート(MDS n = 34、血球減少対照n = 28)で確認された。 MDS-CBCスコアは、検査時に原因不明の血球減少患者からMDSからを疑い、あるいは除外する血液塗抹標本を用いた簡単で迅速なツールである。このようにして、CBCの評価時に血球減少を有する患者でさらなるMDS特異的な検査を行うかどうかのアセスメントを改善することができる。

 

コメント:Ne-WX、耳慣れないがつまりシスメックスの機械の中で行っているフローサイトメトリーを用いて、好中球の内部構造と分布幅を数値化したものということだろうか。うちの検査室でもできるのかな?

The outcome of patients with high‐risk MDS achieving stable disease after treatment with 5‐azacytidine: A retrospective analysis of the Hellenic (Greek) MDS Study Group

Hematol Oncol. 2018 Oct;36(4):693-700.

 

 アザシチジン(5-AZA)は、治療に反応するIPSSでInt-2およびHighに分類される高リスク骨髄異形成症候群(MDS)患者の生存を改善する。しかし、SDを達成した患者の予後は不明である。このHellenic MDS Study Groupの後ろ向き研究には、5-AZAで治療された高リスクMDS353人が含まれている。治療をうけSDを達成した86人のうち44人(51.6%)が治療を継続しているが、彼らはSDに到達の後に治療を終了した患者とくらべてMDSからAMLへの進行のリスクが低く、OSも延長した。(AMLに進行するまでの期間は38ヶ月と15ヶ月であり、OSは20ヶ月に対して11ヶ月。)さらに、SD患者で5-AZAによる治療を継続した患者は、5-AZAに反応を示した患者とくらべてもAMLへの進行までの期間に差がなかった(38ヶ月vs31ヶ月、OSの中央値は20ヶ月と25ヶ月)。結論として、5-AZA治療後6ヶ月以内にSDを達成したMDS患者は、長期治療の恩恵を受ける可能性があるので、5-AZAを続けるべきである。

 

コメント:はっきりとした効果がなくても、悪化がなければビダーザの治療は続けた方がよい、ということ。確かに、ビダーザしか方法がないので続けている、という例は結構ある。

Azacitidine in the ‘real‐world’: an evaluation of 1101 higher‐risk myelodysplastic syndrome/low blast count acute myeloid leukaemia patients in Ontario, Canada

British Journal of Haematology, 2018, 181, 803–815

 

 アザシチジン(AZA)で治療された、高リスク骨髄異形成症候群(MDS)患者の「現実の」治療成績は、ほとんど知られていないままである。カナダオンタリオ州で治療を受けた1101人の高リスクMDS患者(IPSSでintermediate-2またはhigh)、および芽球20~30%の急性骨髄性白血病(AML)患者を調査した。AZA投与スケジュールは、24.7%が7日間連続、12.4%が6日間連続、62.9%の患者が5-2-2の投与スケジュールであった。投与されたサイクルの中央値は、6(範囲1〜67)であり、少なくとも4サイクルを受けた患者692人(63%)に限られた場合、8(範囲6〜14)であった。生存期間中央値はコホート全体で11.6ヶ月であり、4サイクル以上のAZA投与患者では18ヶ月であった。投与スケジュールによる生存期間の差はなかった(P = 0.87)。高リスクMDSや芽球比率の低いAMLにおけるAZAの大規模な「現実の」評価では、予想よりも低い生存中央値が示された。投与スケジュールによって生存率は変わらなかった。 OSは、少なくとも4サイクルの治療を受けた患者においてより高く、効果出現までの治療継続が必要であるということが強調された。この調査は、高リスクMDS /低芽球比率AMLにおけるAZAの最大の「現実の」評価を表している。

 

AZA-001 traialでは、高リスクMDSや芽球の少ないAMLに対してAZA投与により予後の大幅な改善を認めていると報告されている(既存治療で15ヶ月、AZAで24.5ヶ月)。これに対する「現実の」治療成績をまとめたもの。患者さんにAZAの治療成績を提示するならこちらのほうが現実的か。

Chemotherapy-Free Initial Treatment of Advanced Indolent Lymphoma Has Durable Effect With Low Toxicity: Results From Two Nordic Lymphoma Group Trials With More Than 10 Years of Follow-Up

 2018 Oct 4:JCO1800262. doi: 10.1200/JCO.18.00262. [Epub ahead of print]

 

目的:低悪性度リンパ腫については、治療の適切なタイミングやその順序、治療レジメンの選択などは議論の余地がある。Nordic Lymphoma Groupの2つの無作為化試験では、症候性、あるいは明らかに進行している患者が化学療法は含まない、リツキシマブを含むレジメンで治療が行われた。この研究の目的は、この治療方法の長期生存や形質転換のリスク、新しい治療法の必要性を評価することである。
 
方法:データは、2つのNordic Lymphoma Groupの試験(1998〜1999年および2002〜2008年)のうち1つに登録された低悪性度リンパ腫患者321例(うち濾胞性リンパ腫[FL]が84%)の横断的フォローアップで集められた。すべての患者は、リツキシマブ375mg /m2を週1回、4週投与する治療を1回または2回受けており、148名には無作為にインターフェロンα-2aの追加が割り当てられた。追跡調査データは、臨床試験のデータベースや医療記録から臨床評価を繰り返された上で回収された。
 
結果:追跡期間終了時には、患者の73%が生存しており、無作為割付後の中央値追跡期間は10.6年であった。 とりわけ、36%(FLの38%)は化学療法を必要としなかった。 早期の病勢の進行のために24ヶ月以内に新たな治療を必要としたFL患者では、10年生存率は59%であったのに対して、より長期に寛解を維持していた患者では81%であった。 インターフェロンは長期予後を改善することは示されなかった。 全患者の20%(2.4%/年/人)およびFL患者の18%が形質転換と診断された。 悪性腫瘍合併が12%で認められた。
 
結論:症候性の低悪性度リンパ腫の患者の約3分の1(FLで30%、FLではない患者の23%)は、化学療法を含まないリツキシマブによる初回治療の後に長期間新しい治療を必要としなかった。 全コホートにおいて、10年生存率は優れており、安全性の重大な問題はなく、化学療法は大多数の患者で安全に遅らせることができる可能性があることを示唆している。
 
個人的な意見
・低悪性度リンパ腫で、ある程度の高齢者であればリツキシマブだけの治療というのもよいだろう。
・NEJMにでてきたリツキシマブ+レブラミドによる治療も、古典的な抗がん剤の入らないレジメンだった。今後このような治療がふえてくるのだろうか・・・
・低悪性度リンパ腫の、海外でのフォローアップ検査はどういった期間でどういったモダリティで行われているのだろうか?日本でも、担当医ごとに結構バラバラだったりするしなぁ。低悪性度リンパ腫のTTFTはフォローアップのタイミングに結構左右されそうで。
 
 

CD47 Blockade by Hu5F9-G4 and Rituximab in Non-Hodgkin’s Lymphoma

N Engl J Med 2018; 379:1711-1721

 

CD47は腫瘍細胞に過剰発現しており、マクロファージの貪食作用を抑制している。

背景:Hu5F9-G4(以下、5F9)抗体は、CD47を遮断しマクロファージの貪食作用を誘導するマクロファージ免疫チェックポイント阻害剤である。5F9とリツキシマブを併用すると、マクロファージによる抗体依存性貪食作用への相乗効果が得られる。

方法:再発性または難治性の非ホジキンリンパ腫患者を対象とした第1b相試験を行った。対象はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)または濾胞性リンパ腫(FL)。5F9は1mg/kgを投与された後、毎週10mg・20mg・30mgの維持用量が投与され、有効性・安全性が確認され、第2相試験での投与量が決められた。

結果:合計22人の患者(DLBCL 15人、FL 7人)が登録された。患者の前治療レジメン数の中央値は4レジメン(範囲、2〜10)であり、患者の95%がリツキシマブに抵抗性であった。有害事象は主にグレード1または2であった。最も一般的な有害事象は貧血とinfusion reactionであった。貧血(予想されるオンターゲット効果)は、5F9の導入療法と維持投与によって緩和された。用量を制限する副作用はほとんどなかった。

第2相試験では、5F9は30mg投与された。この投与量で循環白血球・赤血球表面のCD47受容体はおよそ100%ブロックされた。CR+PRは患者の50%に認めた。CRは36%であった。

DLBCLではCR+PR 40%、CR33%、FL患者ではCR+PR 71%、CR43%であった。DLBCL患者の追跡期間は中央値6.2ヶ月であり、FL患者の追跡期間の中央値は8.1ヶ月で、効果があった例の91%はまだ効果が続いていた。

結論:リツキシマブと5F9の組み合わせは、agressiveまたはindolentリンパ腫の両者に効果をもたらした。

 

NEJMのビデオがわかりやすかった。

自分で訳してみたけど、日本語アブストラクトを見たほうが早かったな・・・