今日は教育講演号を
今日は論文ではなく、臨床血液の教育講演号をパラパラ。
じつはいままであまり教育講演号を開くことはなかったのだけど、
この1年のトピックスがつまった号だということに
だいぶ遅ればせながら気付かされた。
今日はリンパ腫のカテゴリを読む。
Tisagenlecleucel in Adult Relapsed or Refractory Diffuse Large B-Cell Lymphoma
December 1, 2018
DOI: 10.1056/NEJMoa1804980
A novel complete blood count‐based score to screen for myelodysplastic syndrome in cytopenic patients
Br J Haematol. 2018 Nov 8. doi: 10.1111/bjh.15626. [Epub ahead of print]
骨髄異形成症候群(MDS)の診断は、しばしば困難であり、時間と資源を消費する。しかし、血算(CBC)の徹底的な分析は、血球減少の他の原因の中からMDSをスクリーニングするのに役立つ可能性がある。この仮説を検証するために、新たに診断された109人のMDS患者およびMDSがないことが確認された50歳以上の399人の血球減少患者が前向き研究に登録された。マルチパラメータ分析では、平均粒子容積(MCV)、絶対好中球数(ANC)および好中球の内部構造の複雑さと分布の幅の中央値(Ne-WX)が2つのコホート間で有意に異なり、MDS-CBCスコアとして定義された。このスコアは、86%の感度および88%の特異性をもちMDSの予測を可能にした。MDS-CBCスコアは、89%の血小板減少対照においてMDSを除外した。さらに、MDS診断におけるスコア値の高さは、EFS(P = 0.02)および全生存期間(P = 0・01)の減少と有意に相関した。このスコアの検出力は、独立した検証コホート(MDS n = 34、血球減少対照n = 28)で確認された。 MDS-CBCスコアは、検査時に原因不明の血球減少患者からMDSからを疑い、あるいは除外する血液塗抹標本を用いた簡単で迅速なツールである。このようにして、CBCの評価時に血球減少を有する患者でさらなるMDS特異的な検査を行うかどうかのアセスメントを改善することができる。
コメント:Ne-WX、耳慣れないがつまりシスメックスの機械の中で行っているフローサイトメトリーを用いて、好中球の内部構造と分布幅を数値化したものということだろうか。うちの検査室でもできるのかな?
The outcome of patients with high‐risk MDS achieving stable disease after treatment with 5‐azacytidine: A retrospective analysis of the Hellenic (Greek) MDS Study Group
Hematol Oncol. 2018 Oct;36(4):693-700.
アザシチジン(5-AZA)は、治療に反応するIPSSでInt-2およびHighに分類される高リスク骨髄異形成症候群(MDS)患者の生存を改善する。しかし、SDを達成した患者の予後は不明である。このHellenic MDS Study Groupの後ろ向き研究には、5-AZAで治療された高リスクMDS353人が含まれている。治療をうけSDを達成した86人のうち44人(51.6%)が治療を継続しているが、彼らはSDに到達の後に治療を終了した患者とくらべてMDSからAMLへの進行のリスクが低く、OSも延長した。(AMLに進行するまでの期間は38ヶ月と15ヶ月であり、OSは20ヶ月に対して11ヶ月。)さらに、SD患者で5-AZAによる治療を継続した患者は、5-AZAに反応を示した患者とくらべてもAMLへの進行までの期間に差がなかった(38ヶ月vs31ヶ月、OSの中央値は20ヶ月と25ヶ月)。結論として、5-AZA治療後6ヶ月以内にSDを達成したMDS患者は、長期治療の恩恵を受ける可能性があるので、5-AZAを続けるべきである。
コメント:はっきりとした効果がなくても、悪化がなければビダーザの治療は続けた方がよい、ということ。確かに、ビダーザしか方法がないので続けている、という例は結構ある。
Azacitidine in the ‘real‐world’: an evaluation of 1101 higher‐risk myelodysplastic syndrome/low blast count acute myeloid leukaemia patients in Ontario, Canada
British Journal of Haematology, 2018, 181, 803–815
アザシチジン(AZA)で治療された、高リスク骨髄異形成症候群(MDS)患者の「現実の」治療成績は、ほとんど知られていないままである。カナダオンタリオ州で治療を受けた1101人の高リスクMDS患者(IPSSでintermediate-2またはhigh)、および芽球20~30%の急性骨髄性白血病(AML)患者を調査した。AZA投与スケジュールは、24.7%が7日間連続、12.4%が6日間連続、62.9%の患者が5-2-2の投与スケジュールであった。投与されたサイクルの中央値は、6(範囲1〜67)であり、少なくとも4サイクルを受けた患者692人(63%)に限られた場合、8(範囲6〜14)であった。生存期間中央値はコホート全体で11.6ヶ月であり、4サイクル以上のAZA投与患者では18ヶ月であった。投与スケジュールによる生存期間の差はなかった(P = 0.87)。高リスクMDSや芽球比率の低いAMLにおけるAZAの大規模な「現実の」評価では、予想よりも低い生存中央値が示された。投与スケジュールによって生存率は変わらなかった。 OSは、少なくとも4サイクルの治療を受けた患者においてより高く、効果出現までの治療継続が必要であるということが強調された。この調査は、高リスクMDS /低芽球比率AMLにおけるAZAの最大の「現実の」評価を表している。
AZA-001 traialでは、高リスクMDSや芽球の少ないAMLに対してAZA投与により予後の大幅な改善を認めていると報告されている(既存治療で15ヶ月、AZAで24.5ヶ月)。これに対する「現実の」治療成績をまとめたもの。患者さんにAZAの治療成績を提示するならこちらのほうが現実的か。
Chemotherapy-Free Initial Treatment of Advanced Indolent Lymphoma Has Durable Effect With Low Toxicity: Results From Two Nordic Lymphoma Group Trials With More Than 10 Years of Follow-Up
J Clin Oncol. 2018 Oct 4:JCO1800262. doi: 10.1200/JCO.18.00262. [Epub ahead of print]
CD47 Blockade by Hu5F9-G4 and Rituximab in Non-Hodgkin’s Lymphoma
N Engl J Med 2018; 379:1711-1721
CD47は腫瘍細胞に過剰発現しており、マクロファージの貪食作用を抑制している。
背景:Hu5F9-G4(以下、5F9)抗体は、CD47を遮断しマクロファージの貪食作用を誘導するマクロファージ免疫チェックポイント阻害剤である。5F9とリツキシマブを併用すると、マクロファージによる抗体依存性貪食作用への相乗効果が得られる。
方法:再発性または難治性の非ホジキンリンパ腫患者を対象とした第1b相試験を行った。対象はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)または濾胞性リンパ腫(FL)。5F9は1mg/kgを投与された後、毎週10mg・20mg・30mgの維持用量が投与され、有効性・安全性が確認され、第2相試験での投与量が決められた。
結果:合計22人の患者(DLBCL 15人、FL 7人)が登録された。患者の前治療レジメン数の中央値は4レジメン(範囲、2〜10)であり、患者の95%がリツキシマブに抵抗性であった。有害事象は主にグレード1または2であった。最も一般的な有害事象は貧血とinfusion reactionであった。貧血(予想されるオンターゲット効果)は、5F9の導入療法と維持投与によって緩和された。用量を制限する副作用はほとんどなかった。
第2相試験では、5F9は30mg投与された。この投与量で循環白血球・赤血球表面のCD47受容体はおよそ100%ブロックされた。CR+PRは患者の50%に認めた。CRは36%であった。
DLBCLではCR+PR 40%、CR33%、FL患者ではCR+PR 71%、CR43%であった。DLBCL患者の追跡期間は中央値6.2ヶ月であり、FL患者の追跡期間の中央値は8.1ヶ月で、効果があった例の91%はまだ効果が続いていた。
結論:リツキシマブと5F9の組み合わせは、agressiveまたはindolentリンパ腫の両者に効果をもたらした。
NEJMのビデオがわかりやすかった。